共有財産の預金を特定の相続人が単独で引き出していたらどうなる?
~知らないと大変!相続で困らないための秘訣~
「相続って、意外とややこしい……。」
親が亡くなった後、遺産分割の話し合いをする前に、ある相続人が預金を勝手に引き出していたら……?「えっ、そんなことしていいの?」と思うかもしれません。でも実は、こうしたケースは意外と多いのです。
今回は、「相続人の一人が預金を単独で引き出していた場合、それがどのように扱われるのか」について、具体例を交えながら分かりやすく解説します!
1. 相続人が勝手に預金を引き出すってアリ?ナシ?
相続が発生すると、被相続人(亡くなった人)の財産は、相続人全員の「共有財産」になります。つまり、遺産分割協議が終わるまでは、預金も不動産も「みんなのもの」なのです。
しかし、現実には「長男が親の口座からお金を勝手に引き出していた!」「相続の話し合いの前に、誰かが預金を使ってしまった!」というケースが後を絶ちません。
例えばこんな状況です。
事例:父の死亡後、長男が500万円を引き出していた
- 父・甲が亡くなる。
- 相続人は長男・乙、長女・丙、次男・丁の3人。
- 遺産分割協議をする前に、乙が甲名義の預金口座から500万円を引き出していた。
- 他の相続人は後になって気づき、「え、どういうこと?」と困惑。
この場合、乙が引き出した500万円はどう扱われるのでしょうか?
2.引き出したお金、返さなくていいの?
「勝手に引き出したんだから、返してもらうべきじゃない?」
確かに、他の相続人からすれば「なぜ勝手に?」と思うでしょう。そこで、場合によっては**「不当利得返還請求」**が行われることもあります。
不当利得とは?
法律的に、「正当な理由なく他人の財産を取得した場合、その分を返還しなければならない」というルールがあります。つまり、乙が正当な理由なしに500万円を取得したと認められれば、他の相続人から「返して!」と請求される可能性があるのです。
例えば、
- 乙が生活費に使ってしまった → 返還請求が認められる可能性あり
- 乙が葬儀費用や相続手続きに使った → 返還不要となる可能性あり
このように、引き出したお金の用途によって、返還の必要があるかどうかが変わります。
3.税金の問題も忘れずに!
さらに、相続税の問題も出てきます。
相続税の申告では、**「相続財産を正確に申告すること」**が求められます。そのため、乙が引き出した500万円も相続財産として計上しなければなりません。
もし乙がこっそり引き出したまま申告せず、後で税務署に発覚すると、
- 追徴課税(ペナルティ)
- 延滞税や加算税
が発生するリスクがあります。相続税の申告期限は相続開始から10か月以内なので、早めに専門家に相談しましょう。
債権差押処分の法的効果が消滅した後の争訟-不当利得返還請求訴訟などによる滞納者の救済-国税局HP
4.こんなトラブルを防ぐには?
相続トラブルを未然に防ぐために、以下のポイントを押さえておきましょう。
① 預金の引き出しは慎重に!
「親の口座から引き出しておこう」と軽い気持ちで動くと、大問題に発展することも。遺産分割前に預金を動かす際は、必ず相続人全員と相談しましょう。
② 遺産分割協議を早めに進める
預金の使い込みを防ぐためにも、遺産分割協議を早めに行うことが重要です。協議が長引くほど、相続人間の不信感が生まれやすくなります。
③ 弁護士や税理士に相談する
相続問題は感情的な対立を招きやすいため、専門家に相談するのがベスト。特に、
- 相続税の計算が複雑な場合
- 相続人同士で揉めそうな場合
は、弁護士や税理士に早めに相談するとスムーズに解決できます。
5.まとめ:預金の引き出しには要注意!
相続において、預金の単独引き出しはトラブルの元。後から「知らなかった!」とならないよう、相続人全員で適切に話し合い、慎重に進めましょう。
相続は、故人の「最後の思いやり」です。円満に分割できるよう、適切な対応を心がけてください!
※この記事は専門家監修のもと慎重に執筆を行っておりますが、万が一記事内容に誤りがあり読者に損害が生じた場合でも当法人は一切責任を負いません。なお、ご指摘がある場合にはお手数おかけ致しますが、「お問合せフォーム」よりお問合せ下さい。但し、記事内容に関するご質問にはお答えできませんので予めご了承下さい。
遺言書に書かれていない財産、どう分ける?~知らないと大変!相続で困らないための秘訣~【新潟相続専門税理士ブログ】
シェアする